2013年06月28日

『貴婦人と一角獣展』内覧会レポート

話題の「貴婦人と一角獣展」プレス内覧会に行ってきました。
(写真は内覧会のときに許可を得て撮影しています。会期中は撮影禁止です)
P1090758s.jpg

私事ですが、私は仏像のみならずヨーロッパ、とくに中世ヨーロッパの文化芸術が大好きでございます。

教会の壁面に描かれた、ブスッと不機嫌そうなマリアさんの顔。キリストの受難を描いた祭壇画・・・。
あのヘタウマなマンガチックな絵がいいんですよね。古代ローマもルネサンスもいいけどさ、やっぱり中世ですよ。上手下手は関係ナシ! キリスト教がんじがらめ。魔女裁判に鋼鉄の処女(中世の拷問器具)。重苦しい世界に、聴こえてくるのはリュートの軽やかなつまびき・・・。
仏像で言うと、天平から平安前期ごろの、怨霊信仰はびこった時代の厳粛で重々しい世界観に通じますね。
ヨーロッパを訪れたときは必ずあちこち教会めぐりして、石造りの荘厳な空間に入り浸るのでございます。
あ゛〜もう今すぐフランス行きたい!

スミマセン。それは私個人の趣味の話でございました。
そんな中、この「貴婦人と一角獣展」は、そんな重苦しさは一切無しで、思いきり「うっとり」できるのでおすすめです。
会場はほとんど女性ですが、男性だって女子力アップできちゃいそうです。

P1090803s.jpg
「我が唯一の望み」と題された6枚目のタピスリー

フランス国立クリュニー中世美術館所蔵の、ものすごく貴重なタピスリー(フランス語で”タペストリー”のこと)。見上げるように大きい6連作が並びます。
制作は1500年ごろと推定され、中世も最末期。
ぼくの専門分野(?)である重苦しい中世キリスト教美術とはちがって、貴族のインテリアグッズですから、華やかで上品な世界がこれでもかと眼前にせまってくるのです。

6枚の大きなタピスリーは、謎めいたところもある。
それぞれが人間の五感をテーマに作られていて、メイン会場の左から「触覚」「嗅覚」「味覚」「聴覚」「視覚」と並び、最後だけがナゾのテーマである「我が唯一の望み」。これがどういう意味なのか「第六感」?「心」?「愛」?その答えは誰にもわかりません。

P1090809s.jpg
これは「味覚」。貴婦人がオウムにお菓子をあげています

どの絵も、貴婦人を中心に獅子と一角獣が並び、さまざまな動植物がちりばめられます。それぞれに意味があるらしく、たとえばウサギは多産なので子孫繁栄を象徴しているとか。
猿は一枚目のタピスリーでは鎖につながれてるのに、二枚目の「嗅覚」からは自由にいたずらっ子みたいな顔して自由に振る舞ってる。これも何かの象徴でしょうか。

一角獣は古代ギリシャからのキャラクターで、キリスト教の目線ではキリストそのものを表すとかありますが、世俗的には一角獣を狩るシーンを恋の成就になぞらえて絵に描かれたそうです。「狩り」=「女をゲット」というところが、なんだかヨーロッパらしい気もするね。
ちなみに「機動戦士ガンダムUC」ではこのタピスリーが物語のカギとして登場するそうで。さすがですね。

そんな謎めいたタピスリーですが、まあなにしろ美しさ満載なわけですよ。色鮮やかで、美しい貴婦人とお目めくりくりの一角獣、まわりにはきれいなお花がいっぱい(千花模様)。
こうなったらもうね、むずかしいこと抜きにして、ひたすらうっとりするのもいいんじゃないでしょうか。
仏像目線でたとえると、鎌倉・東慶寺の水月観音さんを見て眼がハートになる感じ。その水月さんが6人に分身して取り囲まれるみたいな・・・。

P1090769s.jpg
「視覚」の一作は、貴婦人のお顔が僕好みのブスッとした顔(笑)

会場も、大きな一部屋に6連作が並んで、さながら貴族のサロンのお呼ばれしたようです。ああできるのなら、この空間でシャンパンでも傾けたい。素敵なマドモワゼルと一緒に。。。

もとは中部フランス・クルーズ県のブサック城にあったそうですが、そういう古い石造りの空間で見てみたらその美しさもひとしおだったでしょうね。

ちなみに、内覧会では高級な布の匂いがかすかにしてましたよ。むむ、これはきっと! 自分の乏しい経験から「この感じ」を必死に思い出すと、高級レストランに入った時の調度品の匂いというかお部屋の匂いというか、そんな感覚じゃないかと。
(先週二度目に訪れた時は、匂いは薄れていました)。

P1090756s.jpg
クリュニー中世美術館館長のエリザベット・タビュレ=ドゥラエさんが解説。
フランス語聞いてるだけで、なんかもうセレブっぽい気分に。

帰り道には無性にワインが飲みたくなる、素敵な素敵な展覧会です!

追伸:
ぼくがタピスリー以外に気に入ったのがこれ。やっぱり仏像好きとしては彫像を見るとピンときちゃいます。腰の飾りが飛鳥仏の瓔珞ににている!
P1090815s.jpg
聖女バルバラ像

『フランス国立クリュニー中世美術館所蔵 貴婦人と一角獣展』
http://lady-unicorn.jp/
東京は7月15日まで国立新美術館
大阪は7月27日〜10月20日まで国立国際美術館
posted by 宮澤やすみ at 14:55 | Comment(0) | TrackBack(0) | 美術展・展覧会 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2013年06月13日

「日本仏像地図」ツアー・埼玉編

更新滞ってましたが、5月12日は仏像ツアーで埼玉へ。暑かったけど楽しかった!

まずは桶川市の泉福寺へ。
荒川の流れに面した立地で、駅前の住宅地の様子からは想像できない、規模の大きい寺でびっくりしました。9世紀開創で、関東天台宗の中心だった大寺院です。
国重文の阿弥陀さんは、いかにも平安期らしいおっとり顔でのんびり(?)座ってました。
「日本仏像地図」埼玉ツアー
「定朝様式」というやつです

つぎは滑川町の泉福寺へ。寺名が同じだけど関連はないそうです。
こちらはキリッと精悍な顔立ちで、衣文線もやや複雑。先の桶川の像と比べると、鎌倉初期の像かなと推定できます。
「日本仏像地図」埼玉ツアー
町の教育委員会のご協力で特別拝観できました

こんどは川口市に移動し、地蔵院に伝わるナゾの不動明王拝観へ。
不動明王といえば、「不動」ってくらいだからどっしり構えた姿がふつうなのに、ここの不動さんは、剣をふりあげてます。
しかも、髪の毛が風になびいてすごいことになってる(寝グセじゃないよ)。こんな不動明王像は全国レベルでめずらしいでしょ。

「日本仏像地図」埼玉ツアー
過去の取材で撮影させてもらった画像

なぜこのスタイル? いつ、だれが造ったのか?その答えはまったく不明。
ただいま研究真っ最中という、ある意味、今一番ホットな仏像であることはまちがいありません。
こういう場合は、「わからなさを楽しむ」のが一番。かえって観る人の想像をかき立てて、ツアー参加のみなさんも夢中で拝観。
ナゾのお不動さんを囲んで、仏像談義が盛り上がりました。

「日本仏像地図」埼玉ツアー
一般非公開ってこともあり、食い入るように見入ります

「日本仏像地図」埼玉ツアー
こんな看板も用意してくださって、歓迎感謝!

最後は川口の興禅院。これぞ「ザ・平安」というべき、教科書どおりのきれいな平安(定朝)様式釈迦如来。
今回は特別に壇に上らせてもらい、間近で拝観。普段できない禁断の行為に、これまたみなさん大興奮でした!
「日本仏像地図」埼玉ツアー
こういうことは日ごろできないですねえ

今回は、4ヶ寺とも仏像撮影OKいただけました。地方のお寺はこういう計らいもうれしいですね。
参加のみなさんには、狭いお堂で興奮しすぎないよう、マナーをわきまえた撮影をお願いしました。
撮影可不可の方針はお寺によってまったく異なりますが、やっぱり撮影できると一般参拝者にとってはうれしいですよね。

こうした地方の仏像は、個人での拝観ができない場合が多いです。その理由は、人手がなくていちいち対応しきれない、というのが大きな理由のひとつのようです。あとは盗難の問題もあって、誰でもウェルカムとは残念ながらいかないのも実情。
団体グループで訪れれば、お寺さんもその日だけ対応をがんばればいいので、負担が少ないのですね。

「日本仏像地図」。これからも各地を訪ねる予定ですので、もしよかったら初めての人も、一緒にいかがですか?

クラブツーリズム主催:宮澤やすみの仏像ツアー&トーク&ときどき三味線ライブ

(追記)
私が出演しているNHK総合(首都圏)「ひるまえほっと」で、地蔵院さんと興禅院さんその他(これがまたすごい)を紹介する予定で準備中です。今のところ6/21金AM11:05オンエア予定(変更の可能性もあります)



posted by 宮澤やすみ at 12:00 | Comment(0) | TrackBack(0) | 仏像ネタなど | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする