その最たるものが伊勢神宮で、あそこはもともと神仏習合の色濃い場所だったんですよね。
しかも、古事記などによると、伊勢の神さまはもともと奈良にいたという。
平城京でも飛鳥でもなく、奈良「山の辺の道」こそ古代日本の中心地。そこと伊勢の関連を探る旅に出かけました。
古代史的な興味でいっぱいの、伊勢−奈良の古代史ルートを歩く2日間でした。
かなり壮大な旅なのでなかなかレポート書けませんでしたが、まずは初日の伊勢(神宮と田宮寺十一面)のご報告です。

1.伊勢神宮(外宮)
お伊勢参りは外宮、内宮の順に行くのが通例なので、いちおうそれに従ってます。
今年は式年遷宮フィーバーで伊勢は大賑わい。6月の土日でしたがかなりの人出でした。
ガイディングレシーバー(マイクとイヤホン)を使ったので、境内で大声出さずに解説ができました。
20年ごとに社殿や神宝を造り替えて神様が引っ越しするのが「式年遷宮」。20年経った建物は、古代まんまの木造だからか、すでにボロボロ・・・その朽ちた感じがまたいいんですよね〜
撮影禁止エリアの御垣内(みかきうち)にある建物は、このツアーの直前に屋根に穴が開いたそうで、ネットをかぶせて応急処置したそうです。

だいじょうぶ、ここの神様はもうすぐ、隣の敷地の新しい建物に引っ越すんですから(10月5日遷御)
外宮は正式には「豊受(とようけ)大神宮」といって、内宮に祀られる天照大神の食事を司るとされてます。1300年前から欠かさず、日に二回、天照大神を初め伊勢の神さまに食事を捧げる儀式が粛々と行われています。これが「日別朝夕大御饌祭(ひごとあさゆうのおおみけさい)」というもので、すごいのは、調理の種類ややり方が古代のやり方そのまんまなんですね。火を起こすのも、原始時代(って言い方も死語だね)さながらに、木と木をこすりつけて点けるというもの(火鑚(ひきり)という)。くわしくは伊勢神宮のサイトにいろいろあります。
ちょうど、この儀式でお供えされた神饌(しんせん:お供えした食べ物)のおさがりを頂いていたので、ツアー参加のみなさんにもその場でお見せしました。

現物(立派な昆布と干アワビ)をその場で公開。
ツアーのハイライトのひとつ、かな?
外宮の位置付けって、神道の立場だとこんなふうな説明になりますが、古代史的な見方だと別の側面が見えてきます。
もともと土着の信仰があったのを奈良のヤマト王権が進出して、ヤマトの神(天照大神)を祀る一方、土着の信仰も残した、その痕跡が外宮・・・みたいな考え方もあるそうです。
また、壬申の乱で天武天皇が協力者を東国に求めた。勝利した天武天皇が東の玄関口、伊勢を重視したという背景があるとかいろいろ。
古代史はいろんな説があるので、きっとさまざまな異論あると思います。興味ある人は自分で調べてみてくださ〜い。

境内には謎の石組があちこちに。謎解きはランチの後で・・・
2.伊勢神宮(内宮)
やっぱり、伊勢のことを書きだすと長い・・・まだ外宮だけだよ。
なんとか簡潔にしますんで、おつきあいください。
バスでおはらい街まで行き、食事を済ませて内宮へ。ちなみに両宮の読み方は「げくう」「ないくう」と濁らず発音するのが正しいそうです。
いよいよ伊勢の中核・内宮へ。正式名称は「皇大神宮(こうたいじんぐう)」といって、皇室の祖先神・天照大神を祀っています(境内にはほかに別宮などいくつかあります)。
こちらもすごい人出でしたよ。6月といえども日差しがきびしく、湿気もあって汗がすごい。この湿気が建物を20年でボロボロにするんでしょう。

神苑を、ニワトリさん(神の使い)が歩いてました
宇治橋を渡って神苑奥の御手洗場で手を水にぱちゃぱちゃつけてお浄めをする。ここに来ると伊勢神宮に来たなあと旅気分も上がるんだよね。

御手洗場の水が心地よい

滝祭宮にて。神前での礼は手を膝前に出すのが通例のようです。
手を横に付けるサラリーマン風は西洋式
滝祭神、風日祈宮(かざひのみのみや)をお参りした後、いよいよ御正宮へ。すごい大渋滞。
ただし動きはスムーズでそんなに時間かからずお参りできました。
ここはもう日本全体を見守るカミさまなんで、彼女が欲しいとか受験合格とかそういったことはお願いできませんね。感謝の気持ちだけで二拝二拍手一拝しとけばよいかと。その後しばし撮影禁止の御垣内を臨み、奥の方に見えそうで見えない巨大な御正殿を、見るというか感じるというか、まあなんかそんなふうにして数分過ごして裏手に回ります(土日などは裏手に回れるよう巡路ができてます)。

いよいよこの奥が御正殿
御正宮の裏手にあるのが荒祭宮(あらまつりのみや)。天照大神の荒御魂(あらみたま)が祀られていて、内宮に点在する別宮の中でも第一位。具体的なお願い事はこっちで拝むといいそうです。
神様の魂には「和御魂(にぎみたま)」と「荒御魂」という区別があって、伊勢神宮のサイトによると、
”神様の御魂のおだやかなおすがたを、「和御魂(にぎみたま)」と申し上げるのに対して、時にのぞんで、格別に顕著なご神威をあらわされる御魂のおはたらきを、「荒御魂」とたたえます。”
とあります。
まあなんつうか、神社の言葉遣いは丁寧で、下世話なシモジモの者にはわかりづらいところがありまして、あまり突飛な意訳をするのも恐縮ですが、荒御魂のほうがテンション高めで、ちょっと近寄りがたい感じもあるけれど、普段ちょっと言いづらいお願い事も、うまく切り出せば聞いてくれちゃう、みたいな感じでしょうか。
はあ、言葉づかいに気を遣うね。
荒祭宮を離れると、現れるのが外幣殿(げへいでん)。倉庫の役割を果たす建物ですが、建築に注目。御正殿と同じ「唯一神明造(ゆいいつしんめいづくり)」を間近で見られる好例です。もうピッカピカに新調されていました。

外幣殿を前に一生懸命解説
その隣の御稲御倉(みしねのみくら)も実はもんのすごく重要な建物。
伊勢神宮のお祭りでは、神田で栽培した稲を捧げますが、その稲を貯蔵する倉。なんたって日本の文化の根幹は米ですよ。その稲を収める大事な場所だから、建物もただの倉とはいえ御正殿と同じように屋根の飾りに金があしらわれています。
行かれた時は、社殿だけでなくこうした建物も要チェックです。
あとは石組がありますね。四角く積まれた石組を「パワースポットだ!」と手をかざす人がたくさん。
冬に下見に行ったときも、多くの人がさかんに手をかざしていたので、何をしているのか聞いてみました。
そしたら、
「いや、よくわかんないけど、みんながやってるので・・・」
というお答え。う〜ん、これぞまさしく日本人。日本の中心で典型的な日本人を演じる人たち。
ツアー前に伊勢神宮の関係者に取材しましたが、これは四至神(みやのめぐりのかみ)といって境内域内を守護する神さまを祀る所。しかも石組の上の神籬(ひもろぎ)に神が降りてくる、という古代信仰のままのスタイルなので、石組そのものがどうというものではないそうです。
滝祭宮など一部の別宮も、こんなふうに石組だけのお社になっています。

外宮の三ツ石でも似たような状況でした。
これは「ここでお祓いをするよ」という目印(バミり)みたいな意味だそうです
まあたしかにね、ああいう石組を見ると「おおっこれは何かいわくありそう!」って思うもんね。自分も雑誌『ムー』とか好きなクチなんで、気持ちはわかります(^_^;)
内宮境内は広くて、別宮や注目すべきスポットがたくさん。時間に余裕をもってお出かけするといいですよ。
じつは、ほかにも事前取材で神宮関係の方にいろんな話を伺ったのですが、ちょっと公開できない話もあって・・・スミマセン! いつか話せる機会があれば・・・
3.田宮寺
さあここからが、宮澤やすみツアーならではのところ。
ただ伊勢神宮をお参りで終わりじゃないんです。

伊勢神宮ゆかりの田宮寺
江戸時代までは、伊勢は一大神仏習合スポットで、いろんなお寺がありました。さっきの内宮にあった、風日祈宮へ行く橋なんか、お寺のお坊さんが受付してて通行料を取ってたんですから。
弘法大師・空海は伊勢神宮と提携して権威づけに成功しています。今でも伊勢の近くに金剛證寺という真言宗の寺がありますよね。
京都の東寺は稲荷神社と結びついてるし、平安初期に新人デビューした空海さん、朝廷や神社を巻き込み独自の経営手腕でのし上がったわけです。
ちなみに奈良の長谷寺は真言宗豊山派ですが、あそこには天照大神を仏像化した「雨宝童子」がいたりします。
ただ、明治の神仏分離で、伊勢のお寺はほとんど姿を消しました。
そんな中、今でもひっそりと神仏習合の形で残っているのが田宮寺です。伊勢神宮の宮司を務めていた一族・荒木田家の氏寺で、伊勢内宮の神宮寺(神社を管理するお寺)でした。
明治期に荒木田家は伊勢神宮から出て行った(出ていかされた?)のですが、そのおかげなのか今もひっそりお堂の奥で、内宮・外宮を守護するとされる二体の十一面観音を祀っています。ふつうだったら明治政府のはたらきで廃棄されてたでしょうに、よく残ったよね。

すぐそこに、美人観音さんがいらっしゃってます!(芸能レポーター風)
貴重な美人観音を、特別に拝観させてもらいました。
平安時代の作らしい、肉感的なスタイルの美人さん。衣文のウネウネした線や渦巻き型の「渦文」など随所に平安前期の様式が見られました。
伊勢神宮の喧噪とはうってかわって、田舎のはずれにある小さなお寺で、地元の方々が温かく迎えてくれました。

境内には田宮寺神社もある
神社はかくあるべしというような、静寂に包まれた空間。

田宮寺には、伊勢内宮のご神体を載せる「御船代」を保管した「御船殿」があった
ゆったりした時間を過ごして、一路奈良へ。
夕食は、宮澤やすみプロデュースの「仏像フレンチ」。
奈良にあるクイーンアリス・シルクロードさんの協力で、今夜だけのオリジナル料理を堪能しました!
オードブルは伊勢神宮の社殿建築「神明造」をテーマに。もはや仏像じゃないんだけどまあ許して。

”帆立貝柱と小海老のクスクスタブレ 神明造風”
スープとメインディッシュは仏像をテーマにしましたよ。
翌日訪問する奈良・長岳寺の仏像をイメージして、

”冷製 グリーンピースのスープ 玉眼コロッケ添え”
今日の田宮寺十一面をイメージして、

”牛フィレ肉の網焼き 十一面観音菩薩風 黒ニンニクソース”

旅の話でみんな盛り上がりました!翌日の旅も楽しみです!
Photo by Chie Nagura (料理写真は筆者)
ご一緒に!【日本仏像地図】ツアーのご案内
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