会期前に取材に行って、はや2か月。あっという間でした・・・
※その間の活動はこちらにまとめてあります
これから駆け込みでご覧になる人も多いと思うので、ご紹介しておきますね。
(写真は特別な許可を得て撮影したものです。会期中は撮影禁止です)
仏像目線でいうと、なんといっても快慶の「デビュー作」弥勒菩薩立像があります。

像内納入品により、文治5年(1189)の作と判明しています。
快慶は、同僚の運慶とともに写実的で端正な仏像スタイル「慶派」を築いた、スター仏師です。
「デビュー作」と書きましたが、正しくは「現存する最初期の作」です。それ以前はどんな活動してたんでしょうね。運慶の隣で勉強して、ノート貸し借りして、学食で一緒にカレーでも食べてたんですかね。
ちなみに運慶の若いときの作・円成寺大日如来は安元2年(1176)が残っています。
しかし、見ごたえのある仏像はほかにもいろいろ。私が気に入ったのはこの平安期の仏像です。

種類は不明ですが、菩薩の立像。平安のかなり前期で、天平(=奈良時代)のにおいもする。
腰のくびれ、ひねりなんか天平っぽいなまめかしさですよね。唐招提寺にある伝獅子吼菩薩など、通称”トルソー仏”と言われる天平時代の像がありますが、あの肉感的なスタイルに近い。
全体の肉付きや顔がごっついので、セクシーとはいきませんが。
ラグビーのフォワード選手が忘年会で女装しちゃいましたって感じ、と言ったらわかるでしょうか(わからないね)。
快慶の像のあと、これを見て、慶派ファンには申し訳ないけど「あ、オレはやっぱり平安前期が好きだな」と実感しました。
充実した量感、重厚さがケタ違い。
なんか得体の知れない圧倒的な存在感が、ガラス越しでもびんびん来ましたね。
奈良〜平安時代は、政治家の陰謀や疫病、天災など禍々しいことが続き、それを怨霊のしわざとして怨霊鎮めに躍起になった時代だそうです。
この時代、仏像には、怨霊に対抗できるくらいの絶大なパワーが求められました。
そこでは、写実とか、人間そっくりに作るとかはそれほど重視されなかったみたいです。
以前、三井寺に伝わる千手観音像を見ましたけど、きっつーい目つきをして、たくさんの手が無造作にバサッと生えてウネウネして、はっきり言って「キモチワルイ」(笑)
しかも下半身はめっちゃ寸詰まりの短足で、プロポーションの理想とかまったく無視。
でも、それで全然いいんですね。
きっと、下半身が見えないタイプの厨子に収められたんでしょう。上半身でオーラを出してくれればいい、という当時の関係者の声が聞こえてきます。
仏像が「彫刻」ではなく、霊的なお仕事をしてもらうための実用品だったわけで、まあ、今でもそれは変わらないんですけど、切実さがちがうような気がします。怨霊というストレスに負けないための、なにか切迫したものを感じます。
まあようするに、この平安前期の立像は、仏像が洗練されていく前の時代のものですね。
一方、若き快慶が造った菩薩立像は、軽やかでキレイ。淡麗辛口。当時も末法思想で大変だったでしょうけど、洗練されてますよね。
先日、東京芸大大学院の研究生の卒業制作を見に行きましたが、その時の「よくできてるなあ」という気持ちを思い出しました。
いや、これはこれで美しくてすばらしいんですけど、好みの話ですよ。
フレッシュな白ワインも大好きだけど、重厚な赤ワインはやっぱイイよな〜、みたいな。
とまあ、仏像についていろいろ思いを広げましたけど、ボストン美術館、仏像いろいろ予想以上に見ごたえありました。
そして、仏画がいいです。

かなり古い、しかも迫力満点の仏画がずらり。
なかでも、天平時代の「法華堂根本曼荼羅図」はお見逃しなく。
奈良時代の絵が残ってるというのは驚異的です。「現存最古」とか「最初期の作例」なんていう言葉に反応しちゃう人にはたまらないと思います。
いろいろ宣伝されてる龍の絵もいいですけど、ほかでさんざん紹介されているので割愛します。
最後に、吉備真備さんのスーパー超人伝説絵巻もユーモラスでよかったです。

びゅーんと空飛んでます。
【ボストン美術館 日本美術の至宝】
会期 2012年3月20日(火・祝)〜6月10日(日)
会場 東京国立博物館 平成館 [上野公園]
開館時間 午前9時30分〜午後5時
※ 金曜日は午後8時、土日祝休日は午後6時まで開館
※ 入館は閉館の30分前まで
やっと中に入っても、どこに行っても人の頭のむこうに展示物がある。
ずるいよ!こんなに優雅にじっくり見られるなんて本当にやすみさんずるい!快慶さんの弥勒菩薩立像にお会いしてそこだけはじっくり時間をかけて、、あとは人に酔って気持ちが悪くなりそうでザッと見て失礼しました。フェノロサ、モース、ビゲローさん達に感謝!国外に持ち出されても
気温や湿度も違うのにこんなに綺麗に保存されていて、素敵なお姿でした。左腕のアクセサリーが「これ!新しい!」と思いました。