2013年06月28日

『貴婦人と一角獣展』内覧会レポート

話題の「貴婦人と一角獣展」プレス内覧会に行ってきました。
(写真は内覧会のときに許可を得て撮影しています。会期中は撮影禁止です)
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私事ですが、私は仏像のみならずヨーロッパ、とくに中世ヨーロッパの文化芸術が大好きでございます。

教会の壁面に描かれた、ブスッと不機嫌そうなマリアさんの顔。キリストの受難を描いた祭壇画・・・。
あのヘタウマなマンガチックな絵がいいんですよね。古代ローマもルネサンスもいいけどさ、やっぱり中世ですよ。上手下手は関係ナシ! キリスト教がんじがらめ。魔女裁判に鋼鉄の処女(中世の拷問器具)。重苦しい世界に、聴こえてくるのはリュートの軽やかなつまびき・・・。
仏像で言うと、天平から平安前期ごろの、怨霊信仰はびこった時代の厳粛で重々しい世界観に通じますね。
ヨーロッパを訪れたときは必ずあちこち教会めぐりして、石造りの荘厳な空間に入り浸るのでございます。
あ゛〜もう今すぐフランス行きたい!

スミマセン。それは私個人の趣味の話でございました。
そんな中、この「貴婦人と一角獣展」は、そんな重苦しさは一切無しで、思いきり「うっとり」できるのでおすすめです。
会場はほとんど女性ですが、男性だって女子力アップできちゃいそうです。

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「我が唯一の望み」と題された6枚目のタピスリー

フランス国立クリュニー中世美術館所蔵の、ものすごく貴重なタピスリー(フランス語で”タペストリー”のこと)。見上げるように大きい6連作が並びます。
制作は1500年ごろと推定され、中世も最末期。
ぼくの専門分野(?)である重苦しい中世キリスト教美術とはちがって、貴族のインテリアグッズですから、華やかで上品な世界がこれでもかと眼前にせまってくるのです。

6枚の大きなタピスリーは、謎めいたところもある。
それぞれが人間の五感をテーマに作られていて、メイン会場の左から「触覚」「嗅覚」「味覚」「聴覚」「視覚」と並び、最後だけがナゾのテーマである「我が唯一の望み」。これがどういう意味なのか「第六感」?「心」?「愛」?その答えは誰にもわかりません。

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これは「味覚」。貴婦人がオウムにお菓子をあげています

どの絵も、貴婦人を中心に獅子と一角獣が並び、さまざまな動植物がちりばめられます。それぞれに意味があるらしく、たとえばウサギは多産なので子孫繁栄を象徴しているとか。
猿は一枚目のタピスリーでは鎖につながれてるのに、二枚目の「嗅覚」からは自由にいたずらっ子みたいな顔して自由に振る舞ってる。これも何かの象徴でしょうか。

一角獣は古代ギリシャからのキャラクターで、キリスト教の目線ではキリストそのものを表すとかありますが、世俗的には一角獣を狩るシーンを恋の成就になぞらえて絵に描かれたそうです。「狩り」=「女をゲット」というところが、なんだかヨーロッパらしい気もするね。
ちなみに「機動戦士ガンダムUC」ではこのタピスリーが物語のカギとして登場するそうで。さすがですね。

そんな謎めいたタピスリーですが、まあなにしろ美しさ満載なわけですよ。色鮮やかで、美しい貴婦人とお目めくりくりの一角獣、まわりにはきれいなお花がいっぱい(千花模様)。
こうなったらもうね、むずかしいこと抜きにして、ひたすらうっとりするのもいいんじゃないでしょうか。
仏像目線でたとえると、鎌倉・東慶寺の水月観音さんを見て眼がハートになる感じ。その水月さんが6人に分身して取り囲まれるみたいな・・・。

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「視覚」の一作は、貴婦人のお顔が僕好みのブスッとした顔(笑)

会場も、大きな一部屋に6連作が並んで、さながら貴族のサロンのお呼ばれしたようです。ああできるのなら、この空間でシャンパンでも傾けたい。素敵なマドモワゼルと一緒に。。。

もとは中部フランス・クルーズ県のブサック城にあったそうですが、そういう古い石造りの空間で見てみたらその美しさもひとしおだったでしょうね。

ちなみに、内覧会では高級な布の匂いがかすかにしてましたよ。むむ、これはきっと! 自分の乏しい経験から「この感じ」を必死に思い出すと、高級レストランに入った時の調度品の匂いというかお部屋の匂いというか、そんな感覚じゃないかと。
(先週二度目に訪れた時は、匂いは薄れていました)。

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クリュニー中世美術館館長のエリザベット・タビュレ=ドゥラエさんが解説。
フランス語聞いてるだけで、なんかもうセレブっぽい気分に。

帰り道には無性にワインが飲みたくなる、素敵な素敵な展覧会です!

追伸:
ぼくがタピスリー以外に気に入ったのがこれ。やっぱり仏像好きとしては彫像を見るとピンときちゃいます。腰の飾りが飛鳥仏の瓔珞ににている!
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聖女バルバラ像

『フランス国立クリュニー中世美術館所蔵 貴婦人と一角獣展』
http://lady-unicorn.jp/
東京は7月15日まで国立新美術館
大阪は7月27日〜10月20日まで国立国際美術館
posted by 宮澤やすみ at 14:55 | Comment(0) | TrackBack(0) | 美術展・展覧会 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2013年04月22日

「大神社展」レポート−仏像ファンも満足。神像・神宝・古代遺跡のフルコース!

上野・東京国立博物館で開催中の「国宝・大神社展」内覧会に行ってきました。
(写真は特別に許可を得て撮影。会期中は撮影不可です)
大神社展

数々の貴重な祭祀遺物、神宝、神像が集まってます。
各地の神社のみなさんの、この展示にかける意気込みを感じます。「ええい、これも付けちゃうっ!」って、年末のアメ横的な勢い。今ごろ各地の神社はさびしい状況になってるんじゃないでしょうか・・・だいじょうぶですか・・・

そんな中、展示の後半は神像のオンパレード。仏像好きのみなさんも大満足できると思います。

主役は京都・松尾大社の三神像。老年の男神は星一徹並みのきびしい顔。女神はどっしりして老舗の女将という感じ。威厳があります。

大神社展
正面の姿はネットに出てるので検索してくださいね

これらは最古級の像で、平安初期の仏像に似た重々しい表現が特徴。この時期特有の衣文表現「翻派式(ほんぱしき)衣文」がみられる像もあります。つまり仏像的表現をそのまま流用してるんですね。
大神社展
衣文の彫りが翻派式。仏像とちがうのは下半身

それが、だんだんと神像ならではの表現に変わってきます。具体的にいうと、体つきがだんだん単純化されて、座った脚の部分なんかほとんど省略されちゃう。
なまじ精密に彫られると人間臭くなるので、こんなふうに寸詰まりな感じのほうが、なんか得体の知れない存在という印象になって、ちょっと怖くて、かえって霊性を感じるというか、じつに神像らしく見えるんですよね。

大神社展
決して「制作途中」じゃなく、これが神像スタイルなんですね〜ステキです〜♪

あと、京都の仏像スポット・東寺に伝わる神像も見どころ。大きい!
そして、目元に注目。
つりあがった形に彫刻された眼ですが、その形を無視(?)して墨線でちょっとタレ目に描いてあるのを発見しました!
大神社展
彫ったところと墨線が明らかに異なってます

平安前期、仏像は非常に厳しい表情で造られました(ex.神護寺の薬師如来)。いっぽうこの像は、どこか柔和でおっとりした眼になってます。
制作者は、仏らしい眼と、神らしい眼の表現に明確なちがいを表現したかったんでしょうか。ただし、ほかの神像はわりと厳しい目つきが多いので、実際どこまで区別してたのか、わかりませんが・・・。


展示の前半もおもしろいです!
写真は、日本の古代祭祀の原点ともいえる、奈良の三輪山・大神(おおみわ)神社の「山ノ神遺跡」出土品。古代では大きな岩(磐座いわくら)に神が降りるとされ、その周辺で祭りが行われた。写真の遺物は、まさにその磐座周辺で出土したものだそうです。古墳時代ですよ。いにしえの世界へと想像がふくらみます。まさに古代史ロマン!
 
大神社展
大神社展
子持勾玉と祭祀用のミニチュア土器

あとは、鹿島神宮に伝わる神剣もすごいです。長さ3mくらいありそうなばかでっかい直刀。しかも平安時代。見てるだけで背筋が寒くなりますね。

大神社展
有名な国宝・七支刀もお目見え。ホントに出し惜しみしない展示ですね

そんなわけで、神の威厳に向き合ってきた人たちの情熱を感じる展示。仏像だけでは見えてこない、日本の原点みたいなものが、ここで感じられます。

「国宝・大神社展」
平成25(2013)年4月9日(火) 〜 6月2日(日)
東京国立博物館・平成館にて


【お知らせ】
宮澤やすみ同行 一泊二日・神社、仏像ツアー
伊勢と山の辺の道 女神がたどった「神仏ルート」を歩く
●式年遷宮直前の伊勢神宮(外宮・内宮)を参拝
●伊勢神宮を見守る美しい十一面観音を特別拝観
●伊勢の祭神・天照大神は奈良にいた?伝説の「元伊勢」・桧原神社
●古代日本の原点・三輪山の大神神社で伊勢と出雲の神が交わる
●古代の道、山の辺の道に座す秘仏・玄賓庵の不動明王特別拝観
●夕食は伊勢神宮と十一面観音をモチーフにしたオリジナル「仏像フレンチ」の宴
●仏像、神社、古代史、グルメ、旅の楽しみと学びを詰め込んだ2日間!!
催行決定!まだ若干空席ございます。今のうちに!
問合せ:クラブツーリズム概EL.03-5323-5588(コース番号C3131とお伝えください)またはWEBサイト




posted by 宮澤やすみ at 15:17 | Comment(0) | 美術展・展覧会 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2012年10月23日

特別展「出雲−聖地の至宝−」レポート(写真あり)−その2 銅剣銅鐸、仏像、神像−

出雲大社では、60年ぶりに、本殿の修復と檜皮葺の屋根の葺き替えが行われています。その後にはご祭神を本殿に戻す「ご遷宮」もあり、これを機会にと開催されたのがこの展示です。

本館の2室を使って展示があります。
ここでは第2室の紹介をします(第1室の紹介は前の記事で!)。
※写真は特別な許可を得て撮影したものです。

第2室のテーマは出雲周辺の考古遺物と神仏像について。

1.「わざわざ埋める」その理由とは?
発掘調査で、出雲の地域は古くから人が集まって祭祀をした聖地であることがわかってきました。
どれくらい古いかと言うと、弥生時代。紀元前2〜1世紀というから、寺や神社はもちろん、古墳も卑弥呼サマもなかった時代ですよ。

そんな古い時代に作られた銅剣や銅矛(どうほこ)、銅鐸(どうたく)が、出雲の遺跡からたくさん発掘されました。その数358本。それまでに国内で見つかった全数を超える膨大な量が、一気にひとつの遺跡から密集して見つかったんだから、すごいですよね。調査担当のセンセー方もさぞかし興奮したことでしょう。
 銅鐸、金銅仏、神像
 銅鐸、仏像、神像が一堂に。なんてステキな、理想的空間!!

調査の結果、九州から近畿、東海までの地域で作られ、ここに運ばれたそうです。
各地で作られた当時貴重な銅製品、しかも実用できない切れない剣や矛が、わざわざここに運ばれ、わざわざ埋められた。この「わざわざレベル」はよっぽどのことですよ。大人気のどら焼きを求めてわざわざ上野「うさぎや」へ出向く程度の「わざわざ感」とはスケールがちがいます。「うさぎや」へ行くのさえ面倒がっていた自分が恥ずかしいです。
それはともかく、これだけ整然と銅製品が埋められたのは、なにかの儀式だったんじゃないかとかいろいろ推測されてます。

つまり、出雲という土地は、出雲大社ができるはるか以前から、「よっぽど」の土地だったんですね。古代出雲王権の存在を示唆する説もある。この後に覇権を握ったヤマト王権からすれば、かなりの先輩格です。「出雲の国譲り」神話を、出雲王権と、新興のヤマト王権との対立になぞらえると……古代史ロマンの興味はつきないですね。


2.怒りに開く神の眼
さて、第2室で目を引くのは、神像と仏像。ハイようやく私の分野に近づいてきました!
鰐淵寺(がくえんじ)に安置されている観音菩薩像。ああ!会いたかった仏像が今ここに!この細身のスタイル。真ん丸なお顔にかすかに笑う眼と口。細くシンプルなデザインの瓔珞(ようらく:アクセサリーのこと)。飛鳥仏ファンにはたまらないスタイルです。

金銅仏
つきだした口がカワイイ!

この仏像は、時代様式の変遷を見る好例です。細身の身体と、シンプルな瓔珞のデザインは、法隆寺に伝わる飛鳥時代真っ只中の様式。東京国立博物館の法隆寺宝物館に、最古の阿弥陀三尊像がありますが、そのスタイルに近い。

金銅仏
レトロスタイルの瓔珞がイイ!

しかし、顔つきは真ん丸でちょっと微笑み、鼻筋が通ってる。これはその次の白鳳時代。さらに、台座をごらんください。反り返った花弁に細かい飾りがついてエキゾチック。左右の腕から垂れる羽衣の形も注目。これは、薬師寺東院堂の聖観音菩薩に共通するデザインではないでしょうか。あの像は、白鳳期から次の天平にさしかかる頃の時代とされます(諸説あり)。

金銅仏
エキゾチックな台座デザイン!

だから、ここに展示されている鰐淵寺の像は、現代の目からするとただただ「古い」ですが、当時の目線で言えばレトロから最新モードまでが入り混じった独特のスタイルなのです。当時の都は飛鳥。都の最新情報が少しずつ出雲に流れてきたタイムラグから、このようになったんですかね。誰がどういう経緯で作ったのかわかりませんが、出雲の情報収集力に驚きます。

そして奥には神像がずらり。神の像に対してこんなこと言っちゃなんですが、カワイイ!
とくに左端の小さな像。10世紀のかなり古いものだそうですが、ちょこんと座って首をかしげてかわいらしいです。ただ、カワイイのは遠目に見ればの話で、近づくと表情は怖いです。横の男神像も仁王や神将像のように目をカッと開いて威嚇するようです。もともと、神は恐ろしいものなんですよね。恐ろしいからこそ丁寧にお祀りする。天神信仰や怨霊信仰なんかまさにそうです。

出雲 神像
なんかここにいていいんですかって感じ・・・

謎の神・摩多羅神(またらじん)もいます。大黒天と同じインドの「マハーカーラ」がルーツとかいろいろありますが、要するに恐ろしい破壊神、障碍神(しょうげしん:物事の邪魔をする)がルーツのようです。
それが、この像ではニタリと笑っていて、その笑顔がまた不気味この上ない。あんまり不気味なので写真を撮るのも遠慮しました。
僧形神と女神の像は、八幡信仰もさかんだったことを示しています。蔵王権現もいるし、もうホントなんでもありですね。

総じて、木肌あらわの素朴な像ですが、神の荒ぶる面を表現したような、一種近寄りがたいものがばんばん感じられました。

東京で開催された「特撮博物館」で上映された「巨神兵東京に現わる」という短編映画。ここでのセリフに
“恐れこそが神の本質だ”
という言葉がありました。これは、半分は当たっていると思います。人智を超えた圧倒的なものに対し、古人はひたすらひざまづき、捧げ物を奉納して祭り上げてきました。神への「恐れ」は「畏れ」として今につながります。

神さまの集まる出雲。弥生時代からずっと今まで、こういう神々、どっちかというと怖い方々を鎮めてきたんですから、大変な土地ですよね。きっと、古人たちは、神と向き合うときの本気度たるや相当なものだったと思います。あの銅剣の「ここまでやる?」的な埋納風景を見ると、その必死さが実感できます。出雲は荒ぶる神の封印なんでしょうか。ちょっとうす寒い感じも味わえる、そんな展示だと思います。


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■□■ 特別展「出雲−聖地の至宝−」 の開催概要 ■□■
会期:2012年10月10日(水)〜11月25日(日)
会場:東京国立博物館 本館特別5・4室 (東京・上野)
主催:東京国立博物館、島根県、島根県立古代出雲歴史博物館、NHK、NHKプロモーション、読売新聞社
展覧会公式サイト:http://izumo2012.jp/
posted by 宮澤やすみ at 15:27 | Comment(0) | 美術展・展覧会 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2012年10月19日

特別展「出雲−聖地の至宝−」レポート(写真あり)−その1 出雲大社のはなし−

出雲大社では、60年ぶりに、本殿の修復と檜皮葺の屋根の葺き替えが行われています。その後にはご祭神を本殿に戻す「ご遷宮」もあり、これを機会にと開催されたのがこの展示です。

本館の2室を使って展示があります。
ここではまず第1室の紹介をします(第2室の紹介は次の記事で!)。
※写真は特別な許可を得て撮影したものです。

第1室のテーマは出雲大社の社殿について。

1.巨大柱のナゾ
展示室に入ると、奥に社殿の10分の1模型(と言ってもデカイ)が見えます。
出雲大社の模型

古来から、出雲大社の本殿は大きかったという伝承はありました。平安時代の貴族の教科書に「日本一大きいのは出雲の社殿。その次が東大寺大仏殿…」とあるそうです。

出雲大社の宮司を務める千家家(せんげけ)には、大社の本殿の平面図があって、本展でも展示されてるんですけど、丸太を3本束ねて直径3mの柱にする、とあります。

あまりの建築規模に「イヤこれは無いだろ〜」って感じで実在するとは信じられていなかったそうです。

私なんか、言い伝えがあるんだからそうなんだろ、って素直に思っちゃうんですけど、学者のセンセーは違うんですね。証拠が無いかぎりアリとは言えない、と。なんだかストレスたまりそう…。

しかし、西暦2000年に境内で、3本束ねた柱が図面通りの配置で発掘された。これを機に「やっぱホントだったんだ!」と話題になったわけです。センセー方もきっと胸のつかえが取れてスッキリしたんじゃないでしょうか。打ち上げ盛り上がったでしょう。普段寡黙で飲まない教授が焼酎ガブ飲みしてカラオケで「飲んで〜飲んでぇ〜」とか熱唱してる姿が目に浮かびます(勝手な妄想です)。

展示室真ん中に、その柱の実物が鎮座しています。デカイです。その朽ちた大木の存在が美しくて、現代美術の大作にも見えます。

出雲大社の宇豆柱
「宇豆柱(うずばしら)」といって、社殿の正面真ん中に位置する重要な柱です

現場ではこの奥に、社殿建築でもっとも重要な「心御柱(しんのみはしら)」も発掘されました。

ちなみに、もともと神社建築以前の古代祭祀では、高い木、転じて柱に神が降りると信じられてきたそうです。心御柱は、ただの柱ではなく、古代の信仰が受け継がれたまさに神が降りる依り代であり、社殿でもっとも神聖なものなんだそうですよ。


2.天に届く宮殿

ここで日本神話の話になるわけですが、古事記によると、いろいろ苦難を経験したのち国を治めていた大国主命(おおくにぬしのみこと)ですが、高天原からやってきた天照大神の一族から国を譲るよう言われて、なんだかんだあった後、大国主命は腹を決めて、
「国を譲る代わりに、私を天に届くほど高い社に祀ってほしい」
と条件を出しました。
これが出雲大社のはじまりと言われています。
だから、出雲大社の社殿はありえないくらい大きな建物だったわけですね。今回の発掘でそれが実証されました。
高さは16丈(48m)。東大寺の大仏殿15丈より高いそうです。

大きさが実感しにくいので、まずは展示室出口で上映しているCGを先に見るといいかもしれません。
そのうえで宇豆柱を見て、あとは頭の中で大きさを想像してください。

なお、展示室の社殿模型は発掘前に作られたもの。
実際には、社殿のながーい柱は3本まとめたものになるわけですね。

ちなみに、発掘された柱は鎌倉時代のものだそうで、もっと古い初代の社殿はさらに高かった(96m!)と言われています。ワクワクしますね!
これはもう証拠が無いです。ぼくらなんかもう、「〜と言われている」という魔法のキーワードさえあれば、存分にワクワクさせられちゃうわけですが、この件について、センセー方の胸のつかえが取れるのはいつになるんでしょうね。

第2室のレポートもアップしました!


追記:関係ないけど、出雲展のチラシデザインを見ると、
80年代のへヴィメタルバンド ALCATRAZZ(アルカトラス)のアルバムジャケを思い出すのは私だけ!?
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ALCATRAZZの1stアルバム
名曲”ヒロシマ・モナムール”とかなつかし〜!


■□■ 特別展「出雲−聖地の至宝−」 の開催概要 ■□■
会期:2012年10月10日(水)〜11月25日(日)
会場:東京国立博物館 本館特別5・4室 (東京・上野)
主催:東京国立博物館、島根県、島根県立古代出雲歴史博物館、NHK、NHKプロモーション、読売新聞社
展覧会公式サイト:http://izumo2012.jp/

【宮澤やすみライブ告知】
−−小唄 in 神楽坂 2012−−
http://www.yasumimiyazawa.com/kouta.html
年一回だけ実施、お寺のお座敷(椅子席あり)で気軽な小唄ライブ。
トークを交えて、初めて小唄を聴くという方に好評いただいています。
ゲストは大河ドラマ「平清盛」にも出演した井嶋ナギさんによる日本舞踊です。
10月27日(土)14:30開場 15:00開演
神楽坂・毘沙門天書院にて
前売券2000円 当日券2500円

posted by 宮澤やすみ at 16:42 | Comment(0) | 美術展・展覧会 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2012年05月29日

ボストン美術館展(写真つき)から広がる、平安初期の仏像と怨霊信仰の妄想

上野の東博でやってます「ボストン美術館展」。
会期前に取材に行って、はや2か月。あっという間でした・・・
※その間の活動はこちらにまとめてあります

これから駆け込みでご覧になる人も多いと思うので、ご紹介しておきますね。
(写真は特別な許可を得て撮影したものです。会期中は撮影禁止です)
仏像目線でいうと、なんといっても快慶の「デビュー作」弥勒菩薩立像があります。
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像内納入品により、文治5年(1189)の作と判明しています。

快慶は、同僚の運慶とともに写実的で端正な仏像スタイル「慶派」を築いた、スター仏師です。
「デビュー作」と書きましたが、正しくは「現存する最初期の作」です。それ以前はどんな活動してたんでしょうね。運慶の隣で勉強して、ノート貸し借りして、学食で一緒にカレーでも食べてたんですかね。
ちなみに運慶の若いときの作・円成寺大日如来は安元2年(1176)が残っています。

しかし、見ごたえのある仏像はほかにもいろいろ。私が気に入ったのはこの平安期の仏像です。
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種類は不明ですが、菩薩の立像。平安のかなり前期で、天平(=奈良時代)のにおいもする。
腰のくびれ、ひねりなんか天平っぽいなまめかしさですよね。唐招提寺にある伝獅子吼菩薩など、通称”トルソー仏”と言われる天平時代の像がありますが、あの肉感的なスタイルに近い。
全体の肉付きや顔がごっついので、セクシーとはいきませんが。
ラグビーのフォワード選手が忘年会で女装しちゃいましたって感じ、と言ったらわかるでしょうか(わからないね)。

快慶の像のあと、これを見て、慶派ファンには申し訳ないけど「あ、オレはやっぱり平安前期が好きだな」と実感しました。
充実した量感、重厚さがケタ違い。
なんか得体の知れない圧倒的な存在感が、ガラス越しでもびんびん来ましたね。

奈良〜平安時代は、政治家の陰謀や疫病、天災など禍々しいことが続き、それを怨霊のしわざとして怨霊鎮めに躍起になった時代だそうです。
この時代、仏像には、怨霊に対抗できるくらいの絶大なパワーが求められました。
そこでは、写実とか、人間そっくりに作るとかはそれほど重視されなかったみたいです。

以前、三井寺に伝わる千手観音像を見ましたけど、きっつーい目つきをして、たくさんの手が無造作にバサッと生えてウネウネして、はっきり言って「キモチワルイ」(笑)
しかも下半身はめっちゃ寸詰まりの短足で、プロポーションの理想とかまったく無視。

でも、それで全然いいんですね。

きっと、下半身が見えないタイプの厨子に収められたんでしょう。上半身でオーラを出してくれればいい、という当時の関係者の声が聞こえてきます。
仏像が「彫刻」ではなく、霊的なお仕事をしてもらうための実用品だったわけで、まあ、今でもそれは変わらないんですけど、切実さがちがうような気がします。怨霊というストレスに負けないための、なにか切迫したものを感じます。

まあようするに、この平安前期の立像は、仏像が洗練されていく前の時代のものですね。

一方、若き快慶が造った菩薩立像は、軽やかでキレイ。淡麗辛口。当時も末法思想で大変だったでしょうけど、洗練されてますよね。
先日、東京芸大大学院の研究生の卒業制作を見に行きましたが、その時の「よくできてるなあ」という気持ちを思い出しました。
いや、これはこれで美しくてすばらしいんですけど、好みの話ですよ。

フレッシュな白ワインも大好きだけど、重厚な赤ワインはやっぱイイよな〜、みたいな。


とまあ、仏像についていろいろ思いを広げましたけど、ボストン美術館、仏像いろいろ予想以上に見ごたえありました。

そして、仏画がいいです。

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かなり古い、しかも迫力満点の仏画がずらり。

なかでも、天平時代の「法華堂根本曼荼羅図」はお見逃しなく。
奈良時代の絵が残ってるというのは驚異的です。「現存最古」とか「最初期の作例」なんていう言葉に反応しちゃう人にはたまらないと思います。

いろいろ宣伝されてる龍の絵もいいですけど、ほかでさんざん紹介されているので割愛します。

最後に、吉備真備さんのスーパー超人伝説絵巻もユーモラスでよかったです。
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びゅーんと空飛んでます。


【ボストン美術館 日本美術の至宝】
会期 2012年3月20日(火・祝)〜6月10日(日)
会場 東京国立博物館 平成館 [上野公園]
開館時間 午前9時30分〜午後5時
※ 金曜日は午後8時、土日祝休日は午後6時まで開館
※ 入館は閉館の30分前まで

posted by 宮澤やすみ at 12:08 | Comment(2) | 美術展・展覧会 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする