2006年03月29日

原点の喪失

janosin.jpg

おばあちゃんの命日はちょうどお彼岸に近い頃なので、毎年お墓参りに行く。
その帰りには必ずといっていいほど、ある寿司屋に寄っていく。

おばあちゃんは昔からそこをとても贔屓にしていて、そこの寿司しか食べなかった。だからおばあちゃんを偲んでその寿司屋に行くのだ。

ところが、今回いってみたらこの貼り紙が。「体力の限界」とのことで、閉めたのが3日前。

ぼくが小学生の頃から、よくおばあちゃんに連れてってもらった、思い出深い店。

思い出深いどころか、ここで寿司のうまさを知った。トロもウニも、ここで初体験させてもらった。それは衝撃的だった。
噛むほどに深まる鯛の味わいも知った。海の香りたっぷりのホッキ貝、赤貝もよく食べた。ここはぼくの味覚形成における重要な店だった。

今、食べ物についてあれこれ書くようになったのは、この寿司屋「蛇の新」と、同じくおばあちゃんが好きだったフランス料理の体験がものすごく影響してる。

食い道楽で歌舞伎や邦楽が大好きだったおばあちゃんの趣味が、今のぼくを形成している。

ぼくの味覚の原点がひとつ消えてしまった。さびしい。時代は変わった。
店の前でぼうぜんと佇んでいたら、ちょうどおかみさんとおやじさんが出てきてくれた。最後のあいさつができてよかった。

「今までおいしいものをありがとうございました!」
posted by 宮澤やすみ at 23:22 | Comment(0) | TrackBack(0) | たべものばなし | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2006年01月12日

日本料理で昼酒

juhaku.JPG

友人が会社を辞めたというので、久しぶりにあって食事しました。
またもやこないだのウールの着物を着て出かけましたよ。

彼女は退社後の身のふり方をな〜んにも決めておらず、自由人同士、昼間っからビール飲みつつ、ゆるりとすごしたのです。

行ったお店はちょっと高級そうなカウンター割烹なんだけど、ランチは1800円で食べられる。
その値段で写真のとおり美しい日本料理がいただけるのです。

エビも貝もおいしかった。ぬたもよかった。しかし、基本の玉子焼きがちょうどいいダシの加減でふっくらしてとてもおいしい。こういう基本的なところを押さえてくれると、お店への信頼感もぐっと増しますね。

お椀では大根とニンジン(?)を細長く切って水引にしてむすぶなど、随所にお正月気分が感じられる華やかなお料理でした。

そうそう、ごはんにはカラスミが、ほんのちょっとだけど細かくして振りかけてあった。初めて食べたなあカラスミ。こういう味なんだ。

料理人さんが手際よく調理するのを間近で見るのもおもしろい。一生懸命仕事されてます。

この日はお酒を含めてひとり2100円。う〜んお得だなあ。

お店の情報教えたくないけれど、教えちゃう。
店名は「寿白」といいます。下記のリンクをどうぞ。九段下店と銀座店があります。
http://www.juhaku.jp/

ちなみに、この店の母体は「寿司政(すしまさ)」というお寿司屋さん。江戸前寿司発祥の頃からやっている老舗中の老舗です。昆布締めや酢締めなどタネに丁寧に「仕事」をするのが江戸前の寿司。ここのサバがまた絶品なんだ。おいしくて、しかも美しい。良いにぎり寿司って、美しいよね。

以前、連載コラムで寿司政のこと書いたので読んでみてください。「美サバ」のイラストもあります。

「宮澤やすみのお休み処:味も色も深くする江戸前の仕事」
http://www.color-club.com/column/yasumi/031128.html
posted by 宮澤やすみ at 17:11 | Comment(0) | TrackBack(0) | たべものばなし | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2005年12月21日

梅干ワンダーランド

umebosi.jpg仕事で和歌山に行ってきました。梅の取材です。

この季節だから花も実もなかったけれど、梅干はいい感じにできあがってる。

今年作ったものを食べてみると、塩辛さの奥に、桃みたいなフレーバーが広がるんですよ。
梅干がフルーティなんですよ。すごい。

市場には塩抜きして味を調整した甘めのが出回るそうですが、地元の方々は塩漬けしたそのままの白干しやシソ漬けを食べているそうです。そっちのほうがおいしいって。

なかには16年ものなんてヴィンテージ物もあって、それはそれは深い味わいがあったなあ。

訪れた「みなべ町」は、紀州南高梅発祥の地。その南高梅の原木がある高田さんの農場におじゃましたのでした。
南部(みなべ)の高田さんが育てた、果肉たっぷりの梅の実をつける木が、紀州の優良品種に選ばれて全国に広まったんだって。

詳しくは『笑う食卓』vol.7(1月末発売)「宮澤やすみのニッポンふ〜ど記」で!

たくさん梅干を送ってもらって、今、我が家は梅干飽和状態、今ウチに来たらわけてあげるんだけどね。

写真提供:紀州高田果園
posted by 宮澤やすみ at 17:33 | Comment(3) | TrackBack(0) | たべものばなし | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2005年11月15日

服部まつり

hattori.jpg服部栄養専門学校の学園祭に行ってきました。

服部さんの『笑う食卓』にかかわってることから、お食事券をいただいたからです。

学生さん達の調理レベルは高い。しかもタダメシときたら行かねばならんでしょう。

予想はしていたけれど、ものすごい行列。どうやら鯛づくし料理とオマールエビに並んでるみたい。

こういうときは、一人の方が機動力があっていい。パンフをもとに情報収集して、比較的空いてる別館へ。自然食品レストランに落ち着きました。

鯛のポワレのせ玄米茶漬けも、エサを工夫した豚の角煮もうまかったけど、デザートがよかった。なかでも写真中央の「トマトのタルト、豆腐のシブースト仕立て」は最高!

サクサクのタルトにミニトマトの酸味がいい。シブーストはクリームがこってりするところを豆腐で軽く仕上げて、焦がしたカラメルがいいアクセントになってる。

香ばしくて、ちょうどいい甘さと酸味とクリーミーさで、おいしかった〜!

その後、「Leçon de Gôut(ルソン・ド・グー:味覚のレッスン)」コーナーに行って、赤ワインの銘柄当てをしたところ、なんと全問正解! スタッフさんにも「すごい」って言われちゃった。
posted by 宮澤やすみ at 22:41 | Comment(0) | TrackBack(0) | たべものばなし | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2005年11月02日

中世フランスの宴

おもしろい食事会に行ってきました。題して

14世紀フランス宮廷料理人タイユヴァンのレシピによる
「中世の宴」


近所のフランス語学校「日仏学院」内レストランで開かれた食のイベントです。

14世紀といったら室町時代。フランスはヴァロワ朝が起こったばかりで、そこにタイユヴァンという男が宮廷料理人に招かれた。この人は料理長として偉くなって『ル・ヴィアンディエ』という料理書を残した。

で、それに載ってる料理を食べようってイベントなわけです。

調べてみたら、まだフォークがなかった時代というじゃないですか。
ちなみにフォークはヴァロワ朝末期16世紀にイタリアのカトリーヌ・ド・メディシスを妃に迎えた事がきっかけで使われるようになりました。当時のヨーロッパはイタリアが最先端。現在のフランス料理の基礎もここで造られたようです。

で、そんな現代フランス料理より何百年も前の料理を食べようってなわけです。
(フォークはありました。よかった)

メニューはこんな感じ。

スープ:アーモンドのポタージュ
前菜:仔羊のミント煮
主菜:鶉肉のチーズ詰め
アントルメ:ブラマンジェ
デザート:洋梨のパテ
プティフール:オレンジのコンフィ

ポタージュはたまねぎが効いたものでアーモンドは風味程度。
仔羊は現代でもまったく通用する味。お肉の煮込みだからそんな変わりないよね。ミントの香りがいい。

varoi.jpgで、わたしが印象に残ったのはメインの鶉(ウズラ)です。
写真をご覧あれ。そのまんまでしょ(笑)
チーズがコクを増していて、腹巻きみたいに巻かれたベーコンが塩味をプラスする。
それにしても、ウズラそのもののお肉がおいしい。ぷるんとした感じで、前に中華街で食べたカエルの肉を思い出しました。

こんな骨つき肉は、ナイフとフォークより手づかみの方が食べやすいに決まってる。手足を大まかに切り取って、手羽先を手で持ってバクバク。フィンガーボウルが欲しかったな。

ブラマンジェはプリンみたいな現代のとちがう、オートミールのような甘いお粥。ナッツや鶏肉が入っていて病人のお粥みたい。

洋ナシのパテは、パテというよりパイ生地に洋ナシの煮たのが載ったもの。現代なら洋酒を効かせるところだけど砂糖だけの簡素な味付け。それでも煮加減、焼き加減は最高。

オレンジのコンフィ。コンフィは「じっくり煮る」というような意味。はやりの「コンフィチュール」もここからきてんじゃないかな。オレンジの皮を甘く煮詰めてある。ショウガが効いてて、甘いのにピリッとくるからおもしろい。これで胃を活性化させる意味があるらしい。

そんなわけで、中世だけあって、素朴な味の料理の数々でした。参加者が多すぎてワイン頼むのに一苦労したけど、それだけ興味ある人が多いんだね。

この食事会は「飲むこと・食べること」と題したイベントの一環で、ほかにも講演会などやってるようです。
日仏学院のホームページからどうぞ。

posted by 宮澤やすみ at 18:59 | Comment(0) | TrackBack(0) | たべものばなし | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする